超小型のUMPC(ウルトラモバイルパソコン)の「GPD Pocket」は、クラウドファンディング出資者への出荷、国内外通販サイトでの販売が開始されています。
出荷タイミング(ロット)によっては、いくつかの改良・変更が加えられているようですが、熱対策は不十分であるといわれてます。そこで、初期出荷モデルを例に熱対策を実施していきます。
「GPD Pocket」の熱対策をしていく
超小型のUMPC(ウルトラモバイルパソコン)の「GPD Pocket」は、GPD社からの出荷タイミング(ロット)により、いくつかの改良・変更が加えられています。
初期出荷モデルと比べると内蔵ファンが変更になっていたり、グラファイトシート(熱伝導シート)の追加、銅製ヒートシンクの変更などが行われています。
しかし、多くの方から報告されているように、出荷タイミングによってはCPUに塗られているグリスの量が多かったりと、熱対策が十分であるとはいえないという指摘があがっています。そこで、最適なグリス選びとサーマルパッドの貼りつけをし、実際の効果を見ていきます。
「GPD Pocket」を分解・準備をする
「GPD Pokcet」の熱対策をするためには、本体の底面カバーを外し、銅製ヒートシンクを外し、塗られているグリスを除去する必要があります。
非常に簡単な作業ですが、画像を見ながら簡単に解説していきます。
「GPD Pokcet」の底面カバーは6カ所がネジで止められていて、プラスドライバー(0番)があれば、簡単に内部を確認できます。
紛失してしまった場合でも、通販サイトで簡単に購入できます。(精密機械用ネジ(0番、M1.7、L2.5)で、6カ所すべてを同じネジ(0番、M1.7、L3.0)で問題がないという報告もあります)
出荷タイミング(ロット)により、いくつかの改良・変更が加えられています。
画像からも大きな違いがわかると思います。(左:初期出荷モデル、右:2017年8月入荷モデル)
銅製ヒートシンクを外します。3カ所がネジで止めされているので、プラスドライバー(0番)で外していきます。
ケーブル類がひっかからないように注意して外ししましょう。
私が所持している初期出荷モデルは2カ所だけネジで止められていました。
取り外すとシリコングリスがべったりと付着していることがわかります。
グリスの役割はCPUとヒートシンクのスキマを埋めるためのものなので、大量に塗られていると熱がヒートシンクへうまく伝わらない場合があります。
銅製ヒートシンクにもべったりと付着しています。
初期出荷モデルに限らずグリスだけは塗り直したほうが良さそうです。
塗られているグリスは、布やティッシュで除去できます。しかし、目に見えてきれいになっているように思えますが予想以上にグリスが残っています。
無水アルコールを使っての除去でも不十分なので「CPU グリス・リムーバー」を使って完全に除去していきます。
画像のようにマスキングテープで固定して、地金が見えない程度にヘラなどを使って薄く均等に塗っていきます。皮脂が付くので指でグリスを塗りつけてはいけません。
最後にマスキングテープをはがして、銅製ヒートシンク、底部カバーを取り付ければ作業完了です。
「GPD Pocket」に最適なグリスを見つける
熱対策をしていくのであれば「GPD Pokcet」に最適なグリスを塗りたいですよね。
すべてのグリスを試すことはできませんが、国内通販サイトやオーバークロッカーに人気で定評がある3つのグリスを試すことにしました。
GPD Pocketユーザーが多く使用している「ドラクエベンチマーク」を走らせた後の、結果数値(温度変化)をみて最適なグリスを選んでいきます。
工場出荷状態(標準グリス)での各コア温度は、最低温度:53℃、最高温度:73℃となります。(検証:GPD Pocketの初期出荷モデル)
ナノダイヤモンドグリス「JP-DX1」
「ナノダイヤモンドグリス JP-DX1」は、熱伝導率:16W/mKをほこるトップクラスのグリスです。台湾とロシアのナノテクノロジーにより、新しく開発された最高品質のダイヤモンドグリスです。
ベンチマーク結果は、各コア温度の最高温度は70℃となりました。
残念ながら工場出荷時に塗られているグリスと大きな違いが見られませんでした。ただ、ベンチマーク結果後の温度の下がりは早くなりました。
量を調整した塗り直しや、数日間のグリス慣らしを実施しましたが効果は変わりませんでした。
Thermal Grizzly「Kryonaut」
ドイツのThermal Grizzly社より発売された「Thermal Grizzly Kryonaut」は、オーバークロック用に特別に開発された最強クラスのグリスです。熱伝導率:12.5W/mKで「オーバークロッカー 清水貴裕 推奨グリス」とパッケージに記載されています。
ベンチマーク結果としては、各コア温度の最高温度が69℃と、各コア温度が70℃を超えることはありませんでした。最低温度も50℃前後と安定しているように感じます。
さすがオーバークロック向けといったところでしょうか。
AINEX シルバーグリス「AS-05」
「AINEX シルバーグリス AS-05」は、Arctic Silver社で開発されたシルバーグリスです。
熱伝導率:9.0W/mKで、純度99.9%の超微粒子の純銀が含有されています。
最高の性能を発揮するには付着後最大200時間ほどかかると言われています。
ベンチマーク結果は、各コア温度の最高温度が71℃と3つのグリス中で一番高くなりました。対して、最低温度は一番低いものになったので、よく冷えるけど、高くもなるという結果になりました。しばらく時間(200時間)をおいてから検証すれば、もっと良い結果が得られるかもしれません。
「GPD Pocket」に最適なグリスは
ベンチマークの結果から、「GPD Pokcet」に最適なグリスは「Thermal Grizzly Kryonaut」になりそうです。何度かドラクエベンチマークを走らせましたが、このグリスを塗った状態だけが最高温度が70℃を超えることがありませんでした。
また、ベンチマーク後の温度の下がりも早く、安定した温度が得られます。
「GPD Pocket」 検証グリス | ||||
---|---|---|---|---|
グリス名 | 工場出荷 | JP-DX1 | Kryonaut | AS-05 |
主成分 | シリコン | ナノダイヤモンド シリコン | アルミニウム スズ | シルバー シリコン |
熱伝導率 | 不明 | 16.0W/mK | 12.5W/mK | 9.0W/mK |
最低温度 | 53℃ | 54℃ | 49℃ | 46℃ |
最高温度 | 73℃ | 70℃ | 69℃ | 71℃ |
特記事項 | なし | なし | なし | 最高性能の発揮に最大200時間 |
3つのグリスを試しましたが、工場出荷時に塗られているグリスよりも温度の下がりが早くなることが体感できました。ただ、無理をしてグリスを塗り直す必要があるというものではないので、気になる方は塗り直しをすると良いでしょう。
サーマルパッド「Thermal Grizzly minusPad8」を貼りつける
追加の熱対策として、オーバークロッカー向けのサーマルパッド「Thermal Grizzly minusPad8」を貼りつけ検証していきます。
この商品はサーマルパッドの厚さに種類があり、私が購入をしたのは2.0mm厚の「TG-MP8-120-20-20-1R」という型番の商品です。
熱伝導率:8.0W/mkのサーマルパッドで、サーマルパッドの商品の大きさは120 x 20 x 2.0(H)mmです。ハサミやカッターで簡単にカットできます。
「GPD Pokcet」のCPU近くに配置されているコンデンサ周辺の熱を銅製ヒートシンクに伝導するために使っていきます。初期出荷モデルにはグラファイトシート(熱伝導シート)が貼りつけられていないので、画像のように貼りつけます。
「GPD Pokcet」の初期出荷モデルでは、バッテリーコネクタが衝撃で抜けてしまう恐れがあるので、絶縁耐熱効果がある「カプトンテープ」で固定すると良いでしょう。
一見すると逆効果のように思える検証でしたが、ベンチマーク結果では、各コア温度が2℃下がりました。サーマルパッド「Thermal Grizzly minusPad8」を貼りつけただけで、この効果は大きいと考えられます。
下画像は「Thermal Grizzly Kryonaut」を塗った状態でサーマルパッドを貼りつけた場合の結果数値です。
まとめ
「GPD Pokcet」のグリスの塗り直し、サーマルパッドの貼りつけは熱対策に効果があることがわかりました。工場出荷状態ではシリコングリスがべったりと塗りつけられているので、ヒートシンクへうまく熱が伝わっていない場合があります。
必要である対策とはいえないものの、グリスの塗り直しをすることにより、熱伝導率があがり、想定外の故障を防げるかもしれません。
サーマルパッドの貼りつけも思っていた以上の効果があるのでおすすめです。
その他の「GPD Pokcet」の熱対策として提案されているのが、メモリ部分にサーマルパッドを貼りつけヒートシンクへ熱を逃がす方法や、クールスタッフ(放熱フィルム)を使って底面カバーへ熱を逃がす方法などがあります。
より高い熱対策効果を得たい方はやってみると面白いかもしれません。