8インチUMPC「GPD Pocket 3」レビュー。3モデルをオールインワン、着脱モジュール搭載機

GPD Pocketシリーズ最新作の「GPD Pocket 3」は、過去に発売された UMPC(超小型ノートPC)である GPD Pocket 2、GPD MicroPC、GPD P2 Max の特徴を1台にまとめたデバイスです。Core i7-1195G7 / Pentium Silver N6000 を搭載した2つのモデルが同時リリースしています。

主要スペックを向上しただけでなく、ユーザーフィードバックを受けた使いやすさの改善、ネットワーク技術者向けにフォーカスした機能追加がされており、これまで以上に実用レベルで使えるようになりました。一足早く Core i7-1195G7 を搭載したハイエンド版をお借りしたので、使用感・気が付いた点などをご紹介していきます。

GPD Pocket 3 の価格・販売ストア

海外クラウドファンディングサイト Indiegogo でクラウドファンディングを開始しています。
また、日本国内代理店からも先行予約が開始されています。

クラウドファンディング価格

Core i7-1195G7 を採用したハイエンド版の本体価格が 7,770香港ドル(114,000円)、モジュール付きが 8,393香港ドル(123,000円)です。

Pentium Silver N6000 を採用したベース版の本体価格が 5,056香港ドル(74,000円)、モジュール付きが 5,680香港ドル(83,000円)で、どちらも一般販売価格よりも 23%~31% 割安な価格となっています。出資者特典として 4096段階筆圧スタイラスペンが付属します。

日本国内代理店価格

少しでも安く・早く欲しい人向けにはおすすめですが、万が一の破損・故障などの保証・サポートなどを重視する人には、正規代理店での予約購入がおすすめです。

Core i7-1195G7 を採用したハイエンド版の本体価格が 129,999円、Pentium Silver N6000 を採用したベース版の本体価格が 80,614円 で、必要に応じてオプションとして着脱モジュールやスタイラスペンを選択できます。

GPD Pocket 3 のスペック

GPD Pocket 3 のスペックを詳しく見ていきます。
Core i7-1195G7 を採用したハイエンド版と、Pentium Silver N6000 を採用したベース版の2モデルが用意されています。

  • 液晶ディスプレイ:8インチ(1920 × 1200)、16:10
    H-IPS液晶(284ppi)、10点マルチタッチ
  • OS:Windows 10 Home 64bit
  • CPU:Core i7-1195G7 / Pentium Silver N6000
  • GPU:Intel Iris Xe Graphics 96 / UHD Graphics
  • メモリ:16GB(LPDDR4x-3733)/ 8GB(LPDDR4x-2933)
  • ストレージ:1TB / 512GB(PCIe M.2 NVMe 2280 SSD)
  • ポート:USB 3.2 Gen2ポート × 3(ハイエンド版は内1つは Thunderbolt 4)、
    イヤホンジャック、LANポート(RJ45)、HDMIポート
  • 通信:Wi-Fi6、Bluetooth5.2(AX210) / Wi-Fi6、Bluetooth5.0(AX201)
  • バッテリー:38.5Wh、7.7V==5000mAh × 2
  • カメラ:フロントカメラ(2.0MP)
  • その他:ステレオスピーカー、バックライトキーボード、4096段階筆圧感知、
    タッチパッド、指紋認証(電源ボタン)、加速度センサー
  • 大きさ:198 × 137 × 21~23mm(実測値)
  • 重さ:729g(実測値)
  • 素材:金属筐体(ヒンジ部はABS素材)

免責事項:正確性には細心の注意を払っていますが保証はできかねます。

GPD Pocket 3 レビュー

GPD Pocket 3 をしっかりチェックしていきます。
レビューするのは Core i7-1195G7 を搭載したハイエンド版です。製品版出荷時に仕様・動作などが大きく変更される可能性があります。

付属品

付属品は ACアダプタ、USB Type-Cケーブル、ストラップが付属します。
製品版では国際保証書に加え、製品マニュアルが付属します。

クラウドファンディング出資者特典として、4096筆圧感知スタイラスペン(単6形電池稼働)が用意されています。その他にオプションとして着脱モジュール(RS-232モジュール、KVMモジュール、microSDカードモジュール(開発中))が用意されています。

本体の大きさ・重さ・サイズ感

GPD Pocket 3 の大きさは 198 × 137 × 21~23mm、重さは 729g(実測値)です。
一般的なノートPCに比べるとコンパクトな大きさで軽量ですが、これまでの登場したモデルに比べると厚み・重さがあるサイズ感となっています。

大きさを見てわかるとおり、決して「ポケットサイズではない」点には注意が必要です。
ちなみにこれまでに発売された製品、ライバル機の大きさ・重さはこちらです。
数値の一部は実測値ベースで、厚みは最厚部を表示しています。

製品名 画面サイズ 大きさ 重さ
OneMix4 10.1インチ 227 × 157.3 × 17mm 769g
GPD P2 Max 8.9.インチ 213 × 149.5 × 14.2mm 650g
GPD Pocket 2 7インチ 181 × 113 × 14mm 465g
GPD MicroPC 6インチ 153 × 113 × 23.5mm 440g
GPD WIN3 5.5インチ 198 × 92 × 27mm 560g
GPD Pocket 3 8インチ 198 × 137 × 23 mm 729g

本体裏面には4カ所にゴム足、中央に内蔵ファンの吸気口があるだけです。
本体カラーはグレーで、ヒンジ部を除く外装シェルは金属筐体を採用しています。

GPD MicroPC の底面で採用されていたカメラの三脚ネジ規格のネジ穴はありません。
これまでの GPD Pocketシリーズと同じように、天板ロゴ(GPD)は無くても良かったかも。

液晶ディスプレイ・解像度

GPD Pocket 3 の液晶ディスプレイは 8インチ、解像度は 1920 × 1200 です。
画面サイズ・解像度について従来モデルから比べると大型化されていますが、GPD P2 Max(8.9インチ、2560 × 1600)より小さく、GPD MicroPC(6インチ、1280 × 720)より大きな中間サイズといった位置づけです。

左右のベゼル幅は 12mm、上部は 6mm、下部は 5mm ほどで、ベゼル幅はそれほど気にならないのもポイントです。液晶ディスプレイの色味は青み・黄ばみも感じられず鮮明です。

標準では表示スケールが 200%(推奨)となっていますが、個人的には 150% で使うのがベストだと感じました。コンセプトどおりビジネスライクな作業用に向いた液晶ディスプレイ・解像度が選択されています。

インターフェース

GPD Pocket 3 のインターフェースは前面には何もなく、背面に LANポート(RJ45)、着脱モジュールユニット(標準搭載 USB Aモジュール)を備えています。背面右側には落下防止用のストラップホールも用意しています。

本体右側には USB 3.2 Gen2ポートが2つ、イヤホンジャックを配置、左側には充電・給電に対応した USB Type-C(ハイエンド版は Thunderbolt4、ベース版は USB 3.2 Gen2ポート)、HDMIポートを備えています。

180度回転・折りたたみ構造

GPD Pocket 3 の液晶ディスプレイは 180度回転・折りたたみ構造を採用しています。
液晶ディスプレイは反時計回りに 180度回転し、折りたたんでタブレットモードとして使える 2in1構造。画面の最大開度は 180度超で、どの角度でも重心は安定しています。

ノートPCライクな使い方だけでなく、新たに追加されたタブレットモードで幅広い使い方ができるようになりました。製品版では画面回転機能(加速度センサー)を採用し、縦・横画面どちらでも対応します。

気になるヒンジ部の強度については、ヒンジ部周りは ABS素材を採用していますが、ヒンジそのものはステンレス鋼を使った粉末冶金で作られており、簡単に折れてしまうような強度ではないと発表しています。

操作感

GPD Pocket 3 は QWERTYキーボードレイアウトを採用しています。
一般的なキーボードに比べると、やや特殊なレイアウトになっているので慣れが必要です。

これまでのシリーズに比べると主要キーピッチが 16mm で統一されており、初見でのミスタイプが大幅に減りました。一般的な文章入力でも多様する長音符号「ー」、一部記号文字は入力しづらいものの GPD P2 Max のように Fnキーとの組み合わせでなくなりました。キーボードレイアウトをカスタマイズせずとも使えるレベルに改善されたと評価します。

マウス操作はタッチパッドが右手側、マウスボタンは左側の配置の GPD MicroPC ベースです。
タッチスクリーン対応になったことは利点ですが、両手でつかんでの操作を想定しているため、キーボードのホームポジションを維持したまま操作することは困難となっています。

ちなみに、マウスボタンを使わなくてもタッチパッドをタッチでクリック、二本指タッチで右クリック・スクロールなどの基本操作は可能です。電源・指紋認証ボタンは使い勝手が良く便利です。

着脱モジュール

GPD Pocket 3 は、着脱モジュールを用意しています。
標準モジュールは USB Aモジュールで、その他にオプションとして RS-232モジュール、KVMモジュールを用意しています。最終的には microSDカードモジュールを加えた全4つのモジュールを予定しています。

着脱モジュールはネジ止めタイプで、交換には工具(+ドライバー)が必要です。
一般的な使い方を想定しているのなら標準モジュールだけで十分ですが、ネットワーク技術者向けな使い方を想定しているのであれば必須なモジュールとなりそうです。

標準モジュールの USB Aモジュールは一般的な USBデバイスの接続に、RS-232モジュールは産業用デバイスに広く使われている規格です。KVMモジュールは GPD Pocket 3側で別デバイスの画面共有・操作が可能となるモジュールです。

KVMモジュールの使い方は至ってシンプルで、HDMIケーブルと USBケーブルを対象となるデバイスと接続するだけで、後は Windows標準カメラアプリの背面カメラに切り替えれば画面共有・操作が可能となります。対象となるデバイスがスリープモードになると認識できなくなる点については注意が必要です。

公式からは OBS(Open Broadcaster Software)を別途ダウンロードして使うことが推奨されています。(サウンド出力を有効化できる)

製品版では GPDアプリ「GPDHDMIN」を使うことで、KVMモジュールで画面共有・操作が可能です。

スタイラスペン対応

GPD Pocket 3 は 4096段階筆圧スタイラスペン対応しています。
これまでにもスタイラスペンに対応した GPD製品がありましたが、筆圧感知に対応していなかったり、折りたためる構造ではなかったので実用的とはいえませんでした。

GPD Pocket 3 であれば、ライバル機である OneMixシリーズと同じように使うことが可能です。スタイラスペンの書き心地、使用感はまずまずといったところで、ビジネスライクなメモ書き、ちょっとしたお絵描き・画像編集作業に向いています。

通信モジュール

GPD Pocket 3 はワイヤレス通信(Wi-Fi6、Bluetooth 5.0)に対応しています。
採用されている通信モジュールは Intel Wi-Fi 6E AX210 チップです。

GPD WIN3、GPD WIN Max 2021 では仕様とは異なる通信モジュールが搭載されていることが報告されています。GPD Pocket 3 に出資を検討している人は、商品到着時に注意しておきたいポイントです。

初期ストレージ状態

GPD Pocket 3 のストレージ容量は標準で 1TB が搭載されています。
パーティションは分割されていて、無駄なアプリはプリインストールされていません。

搭載されている OS は「Windows 10 Home」で、Cドライブ 100GB、Dドライブに残りが割り当てられています。上画像は、すでに初期設定・アプリ導入後の状態なので参考としてください。

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GPD Pocket 3 のベンチマーク

GPD Pocket 3 のベンチマーク結果を簡単に確認していきます。
設定・環境によっては変わることがあるので、Core i7-1195G7搭載モデルの参考としてください。

冷却能力

ベンチマークテストで負荷をかけた状態で温度を計測しました。
標準設定での最大温度は 80度近くまで上昇したものの、一定時間経過後には 40度台で安定します。高性能設定『UP(PL1=20W、PL2=25W、メモリクロック 4267MHz)』での最大温度は 97度を記録しました。

内蔵ファンの音は平常時ではまったく気にならず、負荷がかかる際には一時的に大きくなりますが許容範囲といった感じです。赤外線温度計での本体表面温度の計測結果は、左上部の最高値で 42度ほどでした。

ストレージ速度

GPD Pocket 3 に標準搭載されているのは、BIWIN製の SSD(1TB M.2 2280)です。
スペックシートどおりのストレージ速度を実現しています。

バッテリー状態

GPD Pocket 3 のバッテリー状態です。
バッテリーの基本情報、容量、状態などの参考としてください。

ベンチマークテスト結果

GPD Pocket 3 のベンチマークテスト結果はご覧のとおりです。
標準設定の『Nominal(PL1=15W、PL2=20W、メモリクロック 3733MHz)』、高性能設定の『UP(PL1=20W、PL2=25W、メモリクロック 4267MHz)』設定それぞれのベンチマークスコアを比較しています。

ベンチマークテスト 標準 高性能
ドラゴンクエストX ベンチマーク 標準品質 フルスクリーン 11629 11864
ドラゴンクエストX ベンチマーク 最高品質 フルスクリーン 10379 11910
ドラゴンクエストX ベンチマーク 標準品質 ウィンドウ 11105 12417
ドラゴンクエストX ベンチマーク 最高品質 ウィンドウ 10163 12394
ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ 標準品質 5945 7142
ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ 標準品質 ノートPC 6003 7144
ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ 高品質 3655 4257
ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ 高品質 ノートPC 4322 5314
ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ 最高品質 3286 3461
PCMARK 10 4965 5369
3DMARK Time SPY 1451 1707
3DMARK Fire Strike 3913 4672
3DMARK Night Raid 12149 15404
CINEBENCH Release23 3713 4568
CINEBENCH Release23(Single Core) 1403 1525

ゲーミング性能についてはスペックありきなので、遊ぶゲームタイトルによっては画面設定の解像度、テクスチャクオリティ、低設定などに変更する必要がありそうです。

連続稼働時間を測定

GPD Pocket 3 連続稼働時間の測定結果です。
測定はベンチマークテスト BBench を使用しています。

  • ディスプレイの明るさは 50%
  • ボリューム 50%
  • スリープしない
  • 無線LAN / Bluetooth:ON
  • 電源プランは「バランス」
  • TDPプランは「Nominal(PL1=15W、PL2=20W、メモリクロック 3733MHz)」

上記の測定条件での測定結果は2時間18分でした。(強制休止まで測定)

TDP設定の変更方法

GPD Pocket 3 の標準設定では、cTDP(Configurable Thermal Design Power)が『Nominal』に設定されています。下記の3つの cTDP設定が選択可能です。

必要に応じて cTDP設定を切り替えることにより、バッテリー持続時間を延ばしたり、ゲームプレイを快適にしたりとパフォーマンスを切り替えることが可能です。

  • Nominal:普通モード(PL1=15W、PL2=20W)
  • Down:省エネモード(PL1=12W、PL2=15W)
  • UP:高性能モード(PL1=20W、PL2=25W)

電源ボタンを押して DELキーを連打すれば BIOS に入れます。
Settingタブの「Configurable TDP Boot Mode」を変更して、F4キーで保存・再起動することで完了します。

また、同設定画面の Memory Frequency ではメモリクロックを 2133MHz~4267MHz に変更可能、Configurable TDP Lock を有効にすることで各モードの cTDP初期設定を自分好みにアレンジすることも可能です。

初期化・リカバリ方法

GPD Pocket 3 の初期化・リカバリは初期化ユーティリティで実施します。
購入したときの初期状態(工場出荷状態)に戻したいというときに便利な機能です。

  1. 電源ボタンを押す
  2. 電源ランプが点灯したら Tabキー 押す(連打すると良い)
  3. 「Start」ボタンをタッチして実行
  4. しばらく待つと完了

リカバリを実行するには、バッテリー残量(50%以上)には十分に注意をしてください。
給電しながらの実行がおすすめです。

3モデルをオールインワンにした GPD Pocket 3

GPD Pocket 3 は 高いパフォーマンスを備え、これまでに発売されたコンセプトが異なる3モデル(GPD Pocket 2、GPD MicroPC、GPD P2 Max)の特徴を1台にまとめた UMPC(超小型ノートPC)です。

実際に使ってみると『コンセプトどおりの仕上がり』となっていて、歴代モデル最高のスペックに、小さいながらも快適なキーボード入力、180度回転・折りたためる液晶ディスプレイ、4096段階筆圧スタイラスペン対応、フロントカメラ(2.0MP)、交換モジュール対応などてんこ盛りの内容となっています。

1つのモデル・使い方に縛られないコンセプトになっているので、UMPC を初めて購入しようと考えている人や、これまでのシリーズを愛用している人でも安心して乗り換えできる完成度に高められています。

製品版ではさらに画面回転機能(加速度センサー)の追加、microSDカードモジュールを加えブラッシュアップしていくことが期待されています。

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