ポータブルゲーミングPC「AYANEO FLIP DS」は、折りたたみ可能なクラムシェル型デザインで、ニンテンドー3DSシリーズのような 2画面を備えた AMD Ryzen 7 7840U / 8840U搭載モデルです。
主要スペックは、Windows 11 Home、AMD Ryzen 7 7840U / 8840Uプロセッサ、7インチ(1920 × 1080)・3.5インチ(960 × 640)、メモリー 16GB / 32GB / 64GB LPDDR5X、ストレージ容量 512GB / 2TB を搭載しています。
AYANEO FLIP DS の価格・販売ストア
AYANEO FLIP DS は、AYANEO日本公式サイト、海外Indiegogo、ハイビーム公式オンラインストア、ハイビーム実店舗で取り扱いをしています。
国内正規版では、7840Uモデルや一部スペックの取り扱いはありません。
カラーラインナップは、シャドーブラック、ミルキーホワイトの全2色。
国内正規版は 2024年9月に発送予定です。
販売価格は以下のとおりです。
・8840U / 32GB / 2TB
販売価格:193,600円
予約価格:176,000円
・8840U / 64GB / 2TB
販売価格:213,000円
予約価格:234,300円
AYANEO FLIP DS のスペック
AYANEO FLIP DS のスペックを詳しく見ていきます。
国内正規版では、7840Uモデルや一部スペックの取り扱いはありません。
製品名 | AYANEO FLIP DS | |
画面 | 7インチ、IPS 解像度 1920 × 1080 400nit、マルチタッチ 120Hz リフレッシュレート 120度 / 150度 / 180度の角度ロック | |
入力関連 | 3.5インチ 解像度 960 × 640 60Hz リフレッシュレート タッチスクリーン | |
OS | Windows 11 Home | |
CPU | AMD Ryzen 7 7840U / 8840U | |
グラフィックス | AMD Radeon 780M | |
メモリ | 16GB / 32GB /64GB LPDDR5X | |
ストレージ | 512GB /2TB M.2 2280 SSD、PCI Express 4.0 | |
インターフェース | USB-C 4.0ポート USB 3.2 Gen 2 Type-Cポート OCuLinkポート microSDカードスロット イヤホンジャック | |
その他 | マスターコントローラー | |
ワイヤレス通信 | Wi-Fi6E、Bluetooth 5.2 | |
バッテリー | 45Wh | |
大きさ | 180 × 102 × 29.8~37.5mm | |
重さ | 650g | |
カラー | ミルキーホワイト シャドーブラック |
免責事項:スペック情報の正確性には細心の注意を払っていますが、保証はできません。
AYANEO FLIP DS のレビュー
海外クラウドファンディングで出資をした AYANEO FLIP DS をレビューします。
付属品から基本的な特徴、インターフェース、操作性、ゲーム動作確認、ベンチマークテスト、評価すべき点、欠点についても徹底解説します。
付属品
1. マニュアル
2. 電源アダプター
3. USB Type-Cケーブル
4. 変換アダプター(3種類)
5. USB Type-C変換アダプター
6. 交換用グリップ
出資特典
クラウドファンディングの出資特典は下記のとおりです。
1. ステッカー
2. マウスパッド
3. ピンバッジ
4. キーホルダー
5. トートバッグ
一般販売時に付属するものではありません。
大きさ・重さ
大きさは 180 × 102 × 29.8~37.5mm、重さは 650g(実測値)
ニンテンドー3DSシリーズのような上下2つの画面を持つクラムシェル型デザインが特徴です。
実際に持ってみると重量バランスに優れていますが、やや重さを感じます。
成形精度や組み立て精度が高く、デザイン性や質感も優れています。
UVコーティングされていますが、シャドーブラックは皮脂や指紋が目立ちやすいと感じます。
一方、シルキーホワイトは擦れや経年劣化によって黄ばみが目立ちやすくなる傾向があります。
サイズ感
ニンテンドー3DS と比較すると、その大きさの違いがよくわかります。
重さや厚みは、同社のAYANEO SLIDEの実測値とほぼ変わりません。
任天堂から発売された携帯型ゲーム機を基準に考えると、重さは 500g未満がストレスなく使える印象を持ちます。人によっては短時間のゲームプレイでもストレス・負担に感じる重さです。
インターフェース
インターフェースは、背面に microSDカードスロット、USB4ポート、USB 3.2 Type-Cポート、OcuLinkポート。正面にはイヤホンジャック、両端にはステレオ・デュアルスピーカーを備えています。
左右にグリップがあり、バイブレーション機能も備えています。
ワイヤレス通信機能は、Wi-Fi 6E と Bluetooth 5.2 をサポートしています。
正面にはゲームコントローラー、電源ボタン一体型の指紋認証センサー、光学式マウスセンサーが搭載しており、多機能なコントロール環境を提供しています。
折りたたむことで画面を守ることができ、持ち運びも便利です。
その他に 6軸ジャイロセンサー、マイクも搭載、RGBライトエフェクトは非搭載。
背面左側には内蔵ファンの吸気口があり、上部の排気口へ放熱します。
高負荷時には、表面温度は最大55度~58度とかなり熱く、デバイスから50cm離れた位置での騒音レベルは最大45dB とそれほど大きくありません。
画面
ポータブルゲーミングPCとしては、初のデュアルスクリーン搭載モデルです。
上画面は 7インチ(1920 × 1080、16:9、画素密度314 PPI)、下画面は3.5インチ(960 × 640、3:2、画素密度324 PPI)のマルチタッチ対応画面です。
ネイティブがポートレート(縦長)な液晶であり、画面の向きは「横(反対向き)」表示です。
リフレッシュレートは、上画面が 120Hz / 60Hz対応で、下画面は 60Hzのみ対応しています。ROG Allyのような可変リフレッシュレート(VRR)はサポートしていません。
ディスプレイの開く角度の最大値は約180度です。
ヒンジ(蝶番)は3 段階で角度を固定できる設計になっており、重心は安定しています。
ただし、ヒンジの設計やパーツ強度は高くないため、取り扱いには注意が必要です。
上下の画面にそれぞれ別々のアプリを表示(単体表示、拡張表示、分割表示が可能)できます。
ただし、画面サイズは大きいとはいえないため、PC設定の変更やゲームの字幕表示などの視認性は低くなる場合があります。あくまで携帯ゲーム機としてのゲームプレイに特化した画面サイズといえそうです。
操作性
AYANEOシリーズ基準のマスターコントローラーを搭載しています。
ランドスケープ(横型)のポータブルゲーミングPC と比較すると、折りたためるクラムシェル型の構造を採用しているため、操作性や持ちやすさは劣ります。
ABXYボタンサイズは 7.7mm、ストロークは浅めの 0.5mm。各種ボタンはメタルドーム、LT/RTボタンはアナログトリガーを採用しています。
左側には音量ボタン、コントローラーホームボタン、スクリーンボタン、アナログスティック、方向ボタン、ビューボタン、メニューボタンが配置されています。
右側には ABXYボタン、アナログスティック、AYAボタン、=ボタンが配置されています。
AYAボタンは長押しで専用アプリ AYASpace画面、短押しで簡素な AYA Quick Tool表示に対応。=ボタンは短押しの機能を専用アプリ AYA Space で割り当て・変更が可能です。
実測したところ、入力遅延の平均値は9.8ms、ポーリングレートは101Hzで、PC接続時のXBOX純正コントローラーには劣る反応速度です。この測定結果はAYANEO SLIDEと同様です。
アナログスティックとアナログトリガーにはホールセンサーが搭載されており、経年劣化や摩耗によるドリフト現象(触れていないのに入力操作が行われる不具合)が発生しにくいパーツを採用しています。
個体差かもしれませんが、RT / LTボタンの押し感が異なります。
RTボタンは底打ち時にカチッとスイッチ感があるのに対して、LTボタンはスイッチ感がないストロークとなっています。
フィット感があり、思っていたよりも持ちやすい本体形状です。
ただし、底部コーナーの角が手のひらに食い込むため、長時間使用すると痛みを感じることがあります。グリップ部分は滑りにくいタイプと、流線型デザインのものを付け替えることが可能です。
コントローラーと画面が接触しないようなレイアウト・配置になっています。
そのため、アナログスティックは窪んだ位置にあり、各種ボタンはフラットで高さがありません。これにより、スティックを操作する際に指がコーナーにぶつかることがあり、ボタンの押し心地についても明瞭さにも欠けています。
LC / RCボタン には短押し・長押しの機能を割り当てることが可能です。
=ボタン同様に、専用アプリ AYASpace で割り当て・変更が可能です。
標準設定では、下記の機能が割り当てられています。
- LC短押し・・・オンスクリーンキーボード
- LC長押し・・・タスクマネージャー
- RC短押し・・・ESC
- RC長押し・・・タスクビュー
下画面には、AYASpaceからタッチパッドやキーボードを表示させることが可能です。
上画面を操作する場合には便利ですが、下画面を操作する際には画面の切り替えが必要だったり、従来のスクリーンキーボードを活用する必要があるため、いくつかの課題が残ります。
専用アプリ
AYAボタンは、専用アプリ『AYASpace』の呼び出しボタンです。
スタートアップ起動が採用されており、マウス操作・短押し・長押し機能を動作させるうえで必須のアプリです。
AYASpaceは、ゲームランチャー機能に加えて、TDP(Thermal Design Power)設定、バイブレーション機能、下画面のオン・オフなどの設定を一元管理できます。
AYAボタンを短押しすることで、画面右側に簡素な AYA Quick Tool が表示されます。
ここでは、ゲームランチャー機能を除くすべての機能の設定・設定ができます。
長押しすることで、詳細な設定画面に移動することができます。
VRAM のサイズ変更や、各種ドライバーのアップデートなどを確認できます。
AYANEO FLIP DS専用画面も提供されています。
AYASpace を呼びだすことなく、下画面で状態の変更・確認を行えます。
その他にタッチパッドやキーボード、サブディスプレイとして使用することもできます。未だに日本語未対応で、おかしな挙動も確認できるため、操作に若干の慣れが必要です。
スクリーンボタンを長押しすることで解決します。
ゲーム動作
高性能なデスクトップゲーミングPC とは異なる『別ジャンル』の商品です。
最新のゲームタイトルも動作しますが、あくまで最低・推奨システム要件に依存します。
ゲームの動作性能としては、競合他社のAMD Ryzen 7 7840U搭載モデルと同等です。
『RSR(Radeon Super Resolution)』という機能を使用することで、ゲーム解像度を下げつつも高画質なスケーリングを実現できます。また、特定のゲームでのフレームレート向上が期待できる『FSR(FidelityFX Super Resolution)』にも対応しています。
RSR(Radon Super Resolution)を有効化して、ディスプレイ解像度を高く設定し、ゲームを起動後にゲームの解像度を低く設定(ディスプレイの解像度より低く設定)することで RSR が機能します。
この機能は、小型のポータブルゲーミングPC向けに最適で、ゲームの解像度や処理負荷を下げつつ、高画質やスケールアップを行い、FPS を向上させることが可能です。また、処理負荷をわずかに上げてリアルで鮮明な映像を楽しむこともできます。
VRAMは最大で 14GB を割り当てることができますが、メモリークロック周波数(6400MHz)の変更はできません。
TDP 28W 設定で、サイバーパンク2077 や Forza Horizon 5、Diablo 4、エルデンリング、黒神話:悟空 は 60FPS で動作し、Starfield や ARMORED CORE VI についても 30FPS以上で快適に動作します。
ストレージ状態
AYANEO FLIP DS のストレージ容量は 512GB / 2TB です。
パーティションは分割されておらず、専用アプリ『AYASpace』と、AMD製品向けソフトウェア『AMD Software: Adrenalin Editon』がプリインストールされています。
搭載されている OS は『Windows 11 Home』です。
日本語に対応しているので、問題なく初期インストールを進められます。
GPD製品(GPD WIN 2)で何度もSSD の換装をしていたところ、ライセンス認証ができなくなりました。問い合わせするのも時間がかかり面倒、新しい OS を購入するのは高すぎる。ローリスクハイリターンな格安ライセンスを手に入れろ![…]
本体の初期化
万が一のトラブルがあっても、初期化ユーティリティで解決できます。
下記の手順を参考に進めてください。
- 電源オフを確認
- 「音量+ボタン」と「RCボタン」を押したまま、電源ボタンを押す
- しばらく待つと、初期化ユーティリティが起動
- 「チェックマーク」をタッチ
- 数分待てば完了
デバイス側のボタン呼び出しでは失敗することがあります。
外部キーボードを接続して、電源ボタン後に F9キー長押しでも起動できます。
ただし、給電をしながらであれば実行可能です。
AYANEO FLIP DS のベンチマーク
AYANEO FLIP DS のベンチマーク結果を確認します。
設定・環境によっては変わることがあるので、あくまでも参考程度にとどめてください。
冷却能力
ベンチマークテストで負荷をかけた状態の温度を計測しました。
最大温度は 70度近くに達しましたが、一定時間経過後には 40度台で安定します。
ゲームプレイや高負荷がかかる状況では、コントローラー左側の表面温度が 58度、下画面の表面温度が 55度に達し、長時間のゲームプレイは厳しいです。内蔵ファンの風切り音は、負荷がかかる際に一時的に大きくなりますが、それほど気になりません。
ストレージ速度(SSD)
標準搭載されている M.2 2230 SSD のストレージ速度です。
Western Digital WD PC SN740 を採用しています。
ストレージ速度(microSDカード)
microSDカードのストレージ速度です。
SanDisk Extreme PRO A2 V30 microSDXC UHS-Iカードを使用して測定しています。
ベンチマークテスト結果
TDP設定は Extreme で『15W』、『28W』のベンチマークスコアを比較しています。
ベンチマークテストの解像度設定は、いずれも 1920 × 1080 です。
解像度と拡大/縮小率は、各ベンチマークテストの設定値と一致させています。
ベンチマークテスト | 15W | 28W |
ファイナルファンタジーXV 軽量品質 | 3536 | 4849 |
ファイナルファンタジーXV 標準品質 | 2707 | 3720 |
ファイナルファンタジーXV 高品質 | 2131 | 2779 |
ブループロトコル 低画質 | 8864 | 13096 |
ブループロトコル 中画質 | 4678 | 7159 |
ブループロトコル 高画質 | 4277 | 6309 |
ブループロトコル 最高画質 | 3184 | 4659 |
PCMARK 10 | 5517 | 5878 |
3DMARK Time SPY | 2436 | 3103 |
3DMARK Fire Strike | 5511 | 7178 |
3DMARK Night Raid | 19422 | 26640 |
3DMARK Port Royal | 1107 | 1557 |
CINEBENCH Release23 | 8282 | 11607 |
CINEBENCH Release23(Single Core) | 1119 | 1115 |
連続稼働時間
AYANEO FLIP DS の連続稼働時間の測定結果です。
測定にはベンチマークテスト BBench を使用しています。
- 2画面の明るさは 50%
- ボリューム 50%
- スリープしない
- 無線LAN / Bluetooth:ON
- 電源プラン「バランス」
- TDP設定「15W」
上記の測定条件で強制休止までの時間を計測したところ、結果はおよそ 2時間でした。
ゲーミング用途に限定した場合、約1時間程度と見て良いでしょう。
まとめ
AYANEO FLIP DS は、AMD Ryzen 7 7840U / 8840U を搭載したクラムシェル型モデルです。
ポータブルゲーミングPC としては初となるニンテンドー3DSシリーズのようなデュエルスクリーン(2画面)を備えているのが特徴です。
最大の特徴であるデュアルスクリーンは、ユーザーエクスペリエンスを大きく改善する可能性があります。ゲームプレイをしながら攻略サイトや動画を見たり、AYA Space の設定を表示・変更できるなど、従来のポータブルゲーミングPC にはないアドバンテージがあります。
一方で、2画面表示時のバッテリー消費が大きく、操作する際に指先が熱くなるためストレスを感じることがあります。また、120Hz の液晶ディスプレイを採用していますが、可変リフレッシュレート(VRR)をサポートしていないため、ゲーミング体験にはやや課題がある点に留意が必要です。
AYANEO FLIP DSは、使うたびに楽しさを実感できる、間違いなく魅力的なモデルです。
次期モデルがリリースされるかは不明ですが、その際には下画面のサイズをもう少し大きく(4インチ程度)、アプリの改善や、開閉ヒンジの設計および強度の改善が期待したいです。
国内正規版には選択肢がありませんが、少し安価な 7840Uモデルをおすすめします。
競合他社からも AMD Ryzen 7 8840U に刷新したモデルが続々とリリースされています。
価格やスペック、重要視するポイントを整理して検討を進めてください。
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